クリニックM&Aよくある事例①
クリニックM&Aよくある事例①
事案1
医師A(70代)は、40のころから医療法人甲(旧法人・売上高6000万・利益4000万(役員報酬含む))として診療所を営んでいたが、近年健康に不安を抱えており、子供(30代後半・医師)に診療所をゆずりたい。
しかし、子供は研究に専念したいと考えており、後継者が見つからない状況である。地域医療への貢献や、従業員の勤労場所確保の観点からも、診療所を閉鎖することは考えていない。
一方で、医師B(30代後半)は、大学医局員として民間病院に10年ほど勤務していたが、個人開業を考えている。新たに診療所を設立するよりも、すでに患者がついている既存の診療所を買収したいと考えている。
いま、医師Bは、医療法人甲の診療所を買収したいと考えているが、どのような方法が適切か。なお、Bの診療科目は、Aと同一である。
医療法人の購入という方法について、事業譲渡・持分の譲渡・合併・法人格の売買という四つの手法があります。今回のケースでは、どの手法が適切でしょうか。
まず、買い手である医師Bは、新たに診療所を設立するよりも、既存の診療所を買いたいと考えているので、法人の殻のみを買うスキームである法人格の売買は取り得ません。
次に、医師Bは、勤務医であり、医療法人格をいまだ取得していないので、法人同士の存在を前提とした合併も、買収手段として取ることができません。
したがって、法人格の売買と合併という手段は除かれます。
事業譲渡と持分の譲渡という手段はどうでしょうか。
医療法人甲は、旧法人(持分の定めのある医療法人)なので、買収の手段として、持分の譲渡も当然可能です。
しかし、30年間も診療所を営んできた医療法人甲については、持分の資産価値が非常に高額になることが考えられます。持分の全部を医師Bが購入することは、現実的に考えて困難でしょう。
以上のような観点から、今回のケースでは、事業譲渡契約が適切であるといえます。