クリニックM&Aよくある事例②
クリニックM&Aよくある事例②
事案2
歯科医師C(40代)は、医療法人丙(売上高5億円・金融機関からの借入れあり)として、関西で多店舗経営をしている。
丙は、関西ですでに分院を6店舗経営しているが、今後関東にも進出し、最大で10店舗まで増やしたい。
また、複数買収する関係上、分院ひとつあたりの買収価格はできるだけ低額におさえたい。
関東進出にあたっては、新たに土地を探して設立するよりも、多少患者が来ている既存の個人診療所を買収し、手っ取り早く分院を設立したいと考えている。
一方で、歯科医師D(60代後半)は、関東で一人医師医療法人丁(旧法人・売上高6500万・立地がよい)として、30年にわたり診療所を経営しているが、労務管理の煩雑さ等もあって、引退を考えており、今後は、知人のクリニックを手伝う程度の業務にしたいと考えている。
診療所を利用してくれる患者からの希望もあり、診療所を閉鎖することは考えていない。
医療法人丙は、Dの診療所を買収したいと考えているが、どのような方法が適切か。
医療法人の購入という方法について、事業譲渡・持分の譲渡・合併・法人格の売買という四つの手法があります。今回のケースでは、どの手法が適切でしょうか。
まず、買い手の医師Cは、新たに土地を探して分院を設立するよりも、既存の個人診療所を買収したいと考えていることから、法人格の殻だけを購入するスキームである法人格の売買という手段は取り得ません。
つぎに、医療法人丁は、旧法人(持分のさだめのある法人)なので、持分の譲渡という手段をとることもできますが、30年にわたり診療所の経営をつづけてきた医療法人丁の資産額は、高額であることが予想されます。その分、丁の持分も高額に評価がなされる可能性があり、分院ひとつあたりの買収価格を低額におさえたい医師Cにとっては、いい選択ではありません。
合併についても、旧法人丁の場合、持分の譲渡と同様の問題が生じるため、いい選択とはいえないでしょう。
したがって、今回のケースでは、事業譲渡契約を締結することが適切といえます。